ビジネスシーンでも多発する学習性無力感の改善方法
- 今井 秀司
- 4月19日
- 読了時間: 4分
もう何をやっても無駄だ、と思っていませんか?
―― ビジネスにおける学習性無力感の正体と改善法

「何をやってもうまくいかない」
「また失敗する気がして動けない」
「努力しても認められないなら、やる意味がない」
このような気持ちに囚われてしまうと、仕事に対する意欲は急激に失われていきます。
やる前からあきらめてしまう、成果を出すことが怖くなる、
成長のチャンスを自ら遠ざけてしまう――
こうした状態は、心理学で「学習性無力感(learned helplessness)」と呼ばれる現象に当てはまります。
学習性無力感とは何か?
学習性無力感とは、「どれだけ努力しても結果が変わらなかった」という経験を繰り返すうちに、「どうせ何をしても無駄だ」と感じ、主体的な行動を諦めてしまう状態のことです。
もともとは動物実験で発見された現象ですが、
職場や学校、家庭など、人間関係や仕事の場面でも多く見られます。
特に、以下のような経験が積み重なると、無力感は強まります。
・頑張っても成果が上がらない
・提案や改善が却下され続ける
・評価されない
・自分の意見を聞いてもらえない
・ミスを責められ続ける
一見すると「やる気がない人」に見えるかもしれませんが、
実は「かつての頑張りが報われなかった人」であることが少なくありません。
ビジネスにおける影響
学習性無力感が強まると、以下のような状態が組織や個人に表れます。
・チャレンジしない。
・提案や発言を避ける。
・責任から逃れようとする。
・「どうせ無理」が口癖になる。
・成果が出ても喜ばない。
これは本人の資質ではなく、過去の経験によって学習された「あきらめ」の結果です。
しかし、無力感は「学習されたもの」である以上、「再学習」や「再体験」によって回復することが可能です。
改善に向けた具体的アプローチ
1.「小さな成功体験」を意図的に設計する。
大きな成果よりも、コントロールできる範囲で小さな成功を積み重ねることが重要です。
「今日できたことを振り返る」「1つだけ目標を達成する」など、
自己効力感(自分にはできるという感覚)を取り戻す機会を意識的につくりましょう。
2.「影響可能な領域」にフォーカスする。
上司の評価や環境の変化など、自分では変えられない要素に意識を向けすぎると、無力感は強まります。
自分が変えられる部分(話し方、行動、準備、時間管理など)に集中する習慣を育てましょう。
3.過去の「意味づけ」を見直す。
うまくいかなかった経験を「自分の力不足」とだけ捉えるのではなく、
「環境の問題だったかもしれない」「タイミングが悪かっただけかもしれない」と
より現実的な視点で再解釈することが大切です。
4.周囲との「意味ある対話」を取り戻す。
孤独な努力が続くと、やがて無力感に変わります。
「気軽に相談できる関係」「感情を否定せず受け止めてくれる上司」など、
言葉を交わせる人との関係性は、回復の大きな支えになります。
5.自分自身への問いを変える。
「なぜ私はできないのか?」ではなく、
「どうすれば少しでも動けるか?」という問いに変えることで、
無力感から行動への視点へとシフトが生まれます。
組織側の関わりとしてできること。
リーダーやマネージャーの立場で、部下やチームの中に「動かない人」がいるとき、
単に「やる気がない」と切り捨ててしまうのは危険です。
・何度も否定された経験がないか。
・チャレンジに対するフィードバックの質はどうか。
・小さな成功や努力をきちんと認識しているか。
こうした点を見直し、安心して「動いていい」と思える環境づくりが必要です。
特に、ミスに対して「責める」のではなく「次につなげる関わり」があるかどうかが、
無力感と挑戦意欲の分かれ目になります。
学習性無力感は、「努力してきた人が、その努力の価値を見失ってしまう」現象です。
でも、その努力が報われなかったのは、本人のせいだけではありません。
環境・関わり・認知のクセが複雑に絡み合った結果です。
だからこそ、そこから立ち直るには、「もう一度、動いていい」と思えるような体験と環境が必要なのです。
もし今、やる気が出ない、何をしても無駄だと感じているなら、
まずは一つ、自分に問いかけてみてください。
「ほんの少しでも、自分が動かせる部分はどこだろう?」
その問いが、小さな再スタートのきっかけになるはずです。
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